2006年03月18日
石田衣良 「赤・黒(ルージュ・ノワール)」

ギャンブルは大好きだ。勝つか負けるかというあのスリルはたまりませんな。でも、一億って額で勝負はできるだろうか?そんなこと思いながら読み始めたこの小説。
池袋ウェストゲートパーク外伝と添えられているとおり、登場人物や舞台の設定は同じものを使っている。もちろん場所は池袋。作者のお得意とするところだ。
売り出し中のヤクザのサルやGボーイズのキングなどおなじみの面々が顔を出し、マコトすらも名前だけだが登場する。面白いのはサルの仕事ぶりがかいま見られるところか。
話の内容は、非合法カジノを題材に取り上げるあたりこれまでIWGPシリーズでもやっていたように社会問題を追求する姿勢を崩さない作者らしさが表れている。いい意味で話の流れはいつものとおりだが、主人公が30代ということもあってか青臭さは少し影を潜めているようだ。
しかし、いただけないのは伝説の張り師アベケンが出てきてからの展開である。ご都合主義もいいところだ。話のリアリティを追求するよりも、エンタテインメント性を重視した結果なのだろうか。ドラマの原作者も経験して、商業主義に近づいてしまったのなら哀しいことだ。
原点回帰を切望する。
ちなみに、ギャンブルにおいて俺がスリルを感じる金額は3万円以上。多いと見るか少ないと見るか、どんなもんでしょ。