第一次世界大戦を舞台にしたスチームパンクの第一作。

スチームパンクというと、蒸気機関が発達した世界でガチャガチャと歯車で動くガジェットが暴れまわるイメージで、小説ではギブスン&スターリングの「デファレンス・エンジン」、アニメでは「スチームボーイ」や「怪傑蒸気探偵団」などを思い出す。

この作品も例に漏れず、蒸気機関を動力とする機械技術の発達した国々(「クランカー」)が登場。スターウォーズに出てくるAT-ATみたいな多脚式歩行機械が走り回る。その用途は乗用から戦闘用までさまざまで、ドレットノート級なんて名前が付けられているあたり軍事マニアをニヤッとさせる。

しかし、普通のスチームパンクとちょっと違うところが一つある。
クランカーの対抗勢力として、遺伝子改良技術が発達したダーウィニストと呼ばれる国も登場することだ。名前のとおりダーウィンの唱えた進化論を基礎とした生物学の発展した勢力で、遺伝子操作で人工的に生み出した生物を使役している。

当然のことながら、クランカーとダーウィニストは対立している。蒸気機関発祥の地イギリスがダーウィニストという設定には異を唱えたいところだが、この対立の構図を第一次世界大戦の国際情勢とリンクさせているから致し方ない。

さて、表題の「リヴァイアサン」は、言わずと知れた旧約聖書に登場する海の怪物だが、この作品ではダーウィニストに生み出された巨大飛行船の名前とされている。
飛行船と言ってもヒンデンブルクやグラーフ・ツェッペリンのようなものではなく、空飛ぶ巨大なクジラのイメージ。体内を歩く描写もあるけど、それはさすがに気持ち悪い。


この世界に登場するのがおぼっちゃま育ちで世間ずれしたハプスブルク家公子アレックと、男装の英国空軍士官候補生デリン。この二人がスイスで出会い、リヴァイアサンに乗って冒険の旅に出発するまでが第一作めのストーリー。

様々な失敗を繰り返しながらも即座に状況を理解するアレックの賢さと女性でありながらも周囲の男性に負けない果敢さを見せるデリンの勇気が特徴付けられた本作。次第に信頼しあっていく二人の次作以降での活躍が楽しみ。

baraking spiders!



※ポケットブック版は味があっていいのだけど、1,600円は高いように感じる。


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2012年03月06日

ん?移行?

ん?

チャンネル北国無くなるの?

http://staff.kitaguni.tv/e2518666.html


移行作業か。

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2012年03月06日

久保俊治「羆撃ち」

久保 俊治
小学館
発売日:2012-02-03

胸にズシッとのしかかるような読後感。

スーパーで食材を買って食べているような生活の中では決して味わえない死と向き合う感覚を重く感じた。


人間は生物である。

生物であるから、他の生物を補食し、自らの糧として生きる。
生きている限りは、常に他の生物の死に包まれている。


しかし、店先に並ぶパッケージには調理しやすい大きさに切り分けられた肉や魚が当たり前のように陳列され、忌避するように死の存在は隠されている。
まるで無機物のように。


違う。

これは違う、と感じる。

本当の生は、死に囲まれている。



本文の中で作者は言う。

“自然の中で生きた者は、すべて死をもって、生きていたときの価値と意味を発揮できるのではないだろうか。”


この世に生まれ出でた者は、死ぬことで、生きていた意味を成す。それは連綿と続いてきた生命の歴史そのものを表す。


“斃された獲物が、生きてきた価値と意味を充分以上に発揮するように、すべてを自分の内に取り入れてやる。自分の生きる糧とするのだ。”


だからこそ、ハンターとして斃した獲物の全てを、余すところなく売る、食べる。


人間は良くも悪くも、社会という一つの枠組みの中で多くの家畜を殺し、食材としている。
そして、なかには食べられることなく廃棄されるものもいる。
それが無性に哀しい。



生きることと死ぬことは同義である。

そんな思いを再確認した。


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