文字通り世界最高のSF作家グレッグ・イーガン。
これには誰も口をはさむ余地は無いだろう。

日本で発売されている短編集「祈りの海」、「しあわせの理由」、「ひとりっ子」では、ハードなSFガジェットや数学理論を駆使しながら、人間の根源的心理を深くえぐるような作品が綺羅星のように並んでいる。

ハードな設定が多く難解さが読み手のハードルを上げているのだけど、分からないところは適度に読み飛ばすくらいがちょうどいい。

この短編集でも最初から飛ばしている。

仮想空間内における進化のシミュレーションに対する神のごとき関与は倫理に反するかという“クリスタルの夜”、自分のクローンを延命処置に利用する“エキストラ”、異性間コミュニケーションを描く“グローリー”などなど。

でも、一番気に入ったのは“ワンの絨毯”。

人間が知覚しているからこそ宇宙が存在するという人間宇宙論者が、肉体を捨てて自己をソフトウェア化して旅した宇宙の涯で初めて出会った異生物が、生物的コンピューター内に構築された仮想空間の生物だった、というエスプリの効いた作品。

自らを仮想化して見つけたのが仮想生物だったなんて、皮肉がたっぷりで笑ってしまった。



それから、最後の一編“伝播”

未完成の理由、それが分かればいい。
もしかしたら、これまでに見つかっている古代文明の謎もそのあたりで解けるのかもしれない。

未来へ伝えたいメッセージでもある。


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