2006年09月17日
北方謙三「水滸伝」9巻まで

相変わらずピンチの続く梁山泊。官軍に勝っているとはいえ、まったく余裕のない緊張状態が続いている。
そして、登場しては死んでゆく108星の面々。林冲すらも危険な目に遭っている。
ここでやっと気づいたのは作者が何を書こうとしているのかということ。
ハードボイルド出身の作者はこれまでも男の生き様をテーマに作品を作り上げているが、舞台を過去に移したころから「死」というものがかなり身近なものとして描かれるようになってきた。
そして、今回だが、これまで読んでいるところでは主人公であるはずの108星がパタパタと死んでいく。全員集合して大活躍する前に何故こんな簡単に死んでいくのかと理不尽さを感じずにはいられなかった。
そこで思ったのはこうだ。作者は「生」そのものを純粋に扱うために「死」に焦点をあてて男の「死に様」を描くことによって「生き様」を強く印象づけているいるのではないだろうか。何のために生きて何のために死んだのか、これまでになく強いメッセージが底にあるような気がする。
どんな風に収束するのか、まだ予測が付かない。