ブクログで読書目標とか掲げてしまって、学生時分依頼の制約を持って読書に臨んでいる今日この頃です。

文庫カバーが一新されてからまた買い始めたこのシリーズを読んでいる。



ススキノ便利屋シリーズの文庫書き下ろしの新刊にして、時系列的にはシリーズ中もっとも古い時代を扱った作品。
どんな苦境にあっても減らず口を叩き、社会の違和感に対して不愉快さを隠そうともしない不屈の便利屋の大学在学中の物語である。

前日譚というものは概して、多くの制約に縛られながら創られるものであるために、ダイナミックさに乏しくこぢんまりとした印象を受けるのであるが、この作品はなかなかうまく描けているのではないだろうか。

30年もの年月に渡って便利屋を続けることになる主人公が抱くススキノで働く者に対する思いの原点。関わると縁起が悪いとまで言われることになる桜庭との出会い、それから、桐原との出会い。そして、他の作品でも語られたフィリピーナの関わる事件。

時代背景もあるのだろうが、序盤は昭和軽薄体を意識したような文体で語られていく。若さ故の自己中心的な考えが見え隠れし、30代後半の己自身としては嗜めようとする気持ちが浮かんでくるんだが、それでいながら懐かしさを感じさせる青臭さも同時に見せてくれる。

また、前日譚でありながら、シリーズ初期では見られないくらいに窮地に陥る主人公。きっとこれがベースとなって、後々の不屈さ、減らず口に繋がっていくのだろう。


誰にでも青い時代はあるのだ。
そんな思いを起こさせる、そんな作品。


ミステリとしては目立ったところはない。
ハードボイルドとしては青臭い。
けれど、青春小説として心を揺さぶられた。


ぜんぜん関係ないが、いつからススキノ探偵シリーズになったのだろう?便利屋のはずだろ。


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